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リカレント教育のメリットとデメリット

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リカレント教育のメリットとデメリット

リカレント教育は、義務教育を修了した社会人が個人のニーズにあわせて仕事に必要な知識や技術を「学び直し」できる教育制度として注目されています。
リカレント教育を実際に受ける方法は、国の職業訓練や教育訓練、大学の社会人コースや通信教育課程、MOOC(MOOCs)などのオンライン講座を利用する方法など多岐にわたります。

自社の社員のために企業内でリカレント教育プログラムを実施する、大学と連携して一般向けの教育支援サービスを提供するなど、リカレント教育の企業での導入事例も増えつつあるようです。

本コラムでは、我が国におけるリカレント教育のメリットとデメリット(拡充への課題)をご紹介し、学習者と勤務先(企業側)のそれぞれの立場でのポイントもあわせて解説します。

リカレント教育の対象者とは?

リカレント教育の対象者は基本的に社会人であり、義務教育や高校・専門学校、大学などでの教育や学業を修了した人となります。対象には現に就労中の人だけでなく、社会人として就労した経験のある人も含みます。また、年齢制限はありません。
リカレント教育のおもな対象者として政府が想定している人のなかには、定年退職後の人、出産・育児・介護などのために離職してブランクがある人、非正規雇用から正規雇用への転換を望む人やキャリアアップ・収入アップのために転職を望む人などが含まれます。
リカレント教育の対象となる人が「学びたい」と思ったときにいつでも学び直しができるようにするには、家族や勤務先の理解と協力が必要になるでしょう。

リカレント教育のメリットとデメリット

リカレント教育ではおもに業務に役立つ知識やスキルを学ぶことから、学業そのものを究めるというよりは個人のキャリアアップや再就職を前提とした制度だと言えます。
リカレント教育の制度が充実して拡大していけば、「生涯学び続けたい」「年齢に関係なく自分の能力を高め続けたい」といった個人の意思が尊重されるという点で有意義なだけでなく、企業としても、より良い人材を獲得・保持するために有効な施策となるでしょう。
リカレント教育を受ける際・導入する際のメリットとデメリット(課題)は具体的に次の通りです。

1. メリット

リカレント教育を導入すること・受けることで次のようなメリットが考えられます。

企業側:人材不足の解消・業務の効率化

リカレント教育が推進されれば、多様かつ高度なスキルを持つ人材が市場に充実し、企業の人材不足が解消される可能性があります。
また、AIやIoTをはじめとした最新の技術に対応できる人材を獲得できることで従業員教育にかかるコストを省くことができ、業務の効率化を見込むことができます。

企業側:国際競争力の強化

多様かつ高度なスキルを持つ人材が充実することで海外の企業との競争力を高めることにつながります。
成功事例からリカレント学習の重要性が広く認識されるようになれば、海外からの流入を含め、さらに高度なスキルを持つ人材が増えることが期待できます。

労働者側:働き方の多様化への対応

ブランクを持つ人や知識・スキル不足の悩みを持つ人が再び教育機関で教育を受けることで、キャリアアップや再就職を果たすことができ、働き方の多様化が促進されます。
出産・育児や介護のために離職した労働者は、ブランクがあってもリカレント教育を受けることでより安心して復職できると考えられます。

労働者側:早期活躍の可能性

企業内の教育・研修の体制が不十分な場合でも、リカレント教育を受けることで個人の能力を開発でき、若年層から復職者・定年退職後の人などそれぞれが就職先で早期に活躍し、成果を出すことが期待できます。
また、リカレント教育を受けることでより専門性の高い職務に就くことができ、年収アップを果たせるという効果もあります。

2. デメリット

前述の通り、リカレント教育を導入すること・受けることには企業側と労働者の双方に多くのメリットがあります。
対して、日本でリカレント教育を拡充していくにあたって懸念されているデメリットと課題は次の通りです。

長期雇用制度との相反性

かつての日本企業で一般的であった「終身雇用制度」をはじめ、日本では長期雇用制度が定着している傾向があります。
社員の教育は長期的なものを前提として社内で完結するスタイルが一般的で、リカレント教育を受けた人を受け入れる態勢とは相反する点が課題となります。

修了者への評価と再就職の可能性

上述の長期雇用制度に伴い、日本の企業は一般的にブランクを経た人物の採用には慎重になる傾向があります。
労働者からすると、再雇用へのハードルが高いのであればリカレント教育を受けることにリスクを感じることすらあるでしょう。
この点が、日本でのリカレント教育の拡充を妨げる一因と考えられます。

企業側の学費負担の増大

リカレント教育を受けた労働者が自社に再就職または復職する場合は、企業は公的な給付金を用いて学費を補助するという方法をとりやすいでしょう。
しかし、リカレント学習の効果検証が不十分な現状では、企業は投資に慎重になり、リカレント学習の費用が個人負担に偏ることによってさらに拡充が遅れるおそれがあります。

企業側の環境・制度の未整備

日本における長時間労働の慣習も課題のひとつです。リカレント教育の拡充のためには、企業は労働者の学びの時間を確保するために時短勤務やフレックスタイム制度、フルタイムでの就学にあたっては有給休暇やサバティカル休暇※など柔軟な勤務体制を認める必要があります。
また、リカレント教育の効果を高めるためにも、修了者には一定のインセンティブを与えるなど具体的な評価を行うことも重要です。
※取得理由を問わず与えられる一定の長期休暇。海外では1ヵ月以上の付与が一般的。

リカレント教育を実施する側の問題

リカレント教育を実施している大学は増えていますが、カリキュラムの数と種類はじゅうぶんでなく、まだまだ選択肢不足であるのが現状です。
今後は個人のニーズにあわせてより多様で高度な教育カリキュラムを提供することが求められています。

リカレント教育を受ける方法

リカレント教育を受ける方法はさまざまです。大学や専門学校への通学やMOOC(MOOCs)などオンライン講座の受講、また、国の職業訓練制度や教育訓練制度を利用するという方法もあります。
リカレント教育を受けるためのおもな手段と、それぞれの手段において企業側が支援できる内容、対応が望まれる内容をご紹介します。

1. 国の職業訓練と教育訓練給付金制度の利用

厚生労働省はハローワーク(公共職業安定所)と連携し、就労を希望する人のために多種多様な職業訓練の機会を提供しています。また、一定の条件を満たす労働者に対して受講費用を支援する「教育訓練給付金制度」を定めています。
「教育訓練給付金制度」では「厚生労働大臣の指定」を受けた英語検定や簿記などおよそ14,000種類の講座を対象に、受講費用の一部が支給されます。
なお、この制度には「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2種類があり、後者のほうが支給要件が厳しく、給付額の率は高くなります。

【参考資料】
教育訓練給付制度(厚生労働省)

2. オンライン講座「MOOC(MOOCs)」

世界の大学が提供する教育コンテンツをオンライン上で受講できるMOOC(MOOCs)(ムーク、ムークス)の利用も近年活発になってきています。日本では東京大学、米国ではマサチューセッツ工科大学など一流大学の多くがMOOC(MOOCs)に参加しています。
MOOC(MOOCs)ではオンライン学習のメリットを活かして、世界中のどこからでも、誰でもが自分のペースで多種多様な分野を学び、さまざまな業種に活かせる知識やスキルを学ぶことができます。
企業は労働者のニーズにあった学習が受けられるよう最新の情報を提供すると良いでしょう。

【関連記事】
MOOC(MOOCs)とは?~さまざまなオンライン学習~
MOOC(MOOCs)のメリットと課題

3. 大学・大学院等の社会人コース

大学や大学院等の社会人を対象としたコースでは、特別選抜制度やパートタイムで学習できるカリキュラムが拡充され、特定の科目履修のみで単位取得を認めているところもあります。
たとえば、明治大学では法人優待制度を設けて社会人の受講を優遇し、日本女子大学ではリカレント教育課程を設けて女性のキャリアアップに役立つカリキュラムを取り揃えています。
企業からは休暇・休業制度の整備や学費の支援などができるでしょう。

4. 大学の夜間部や通信教育課程

就労や育児・介護など家庭の状況による時間的な制約がある人が学びの機会を得られるよう、多くの大学が夜間部や昼夜開講制を設けています。
また、居住地によらず学べる機会を提供するために通信教育課程を設置する大学が増えています。定時制の大学や放送大学などの通信制大学で学ぶという方法もあります。
企業はおもに学費面で学習者を支援できると良いでしょう。

5. 企業内での教育や研修

民間企業が社内に独自の学びの場を設け、独自の学習プログラムを提供するなど企業内でリカレント教育を実施するケースもあります。
業務内容に直結するような研修カリキュラムを階層別・職種別に提供することも企業内で行われるリカレント教育の一環と言えるでしょう。
大学と連携して社会人のための教育カリキュラムを開発し、自社の社員以外の一般社会人向けに教育支援サービスを提供している企業もあります。

まとめ

リカレント教育は日本でも近年その重要性が認識されつつありますが、労働の中断による企業の労働力不足やリカレント教育を実施する側の人材不足、企業の労働体制の未整備やリカレント教育を受ける個人への支援策の整備不足など課題が多く、普及率は高いとは言えません。

また、日本では長期雇用をよしとする文化を背景に、欧米に比べて人材の流動化が進まず、いちど学生に戻ると再就職が難しいという傾向があります。必要性を感じてはいても「学び直し」に踏み出せない人が多いのが現実です。

リカレント教育の制度拡充と同時に、企業の採用や教育においても「再教育を受けた人を受け入れる」という新たな態勢を持つことが求められるでしょう。

リカレント教育に興味をお持ちのかたは、MOOC(MOOCs)などのオンライン講座を受講するなど現在のライフスタイルに採り入れやすい方法から試してみてはいかがでしょうか。

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