動画配信サービスで自社制作の動画を販売するには、大きく3つの方法があります。
ユーザーに購入させる「売り切り型(EST)」、一定期間のみ有料閲覧できる「レンタル型(TVOD)」、そして、定額制で複数の動画を販売する「サブスクリプション型(SVOD)」の3パターンです。
これらの動画販売は、「YouTube」のように広告収益を得るのではなく、配信者が動画コンテンツの価格を決めて販売するという手段であり、日本で提供される有料動画配信サービスは、これらのうちいずれかの手法に分類されます。
本コラムでは、「売り切り型」「レンタル型」「サブスクリプション型」の特徴を説明し、教育事業者が利用する場合にどのような講座に向いているかをあわせて解説します。
動画販売の売り切り型(EST)
売り切り型の動画販売とは、ユーザーがインターネット上の動画ファイルを購入して閲覧するスタイルのことで、EST(Electric Sell-Through:動画ダウンロード販売サービス)ともいわれます。
購入された動画ファイルは、ユーザーの端末にダウンロードして保存される形式もあれば、配信者のサーバーにアクセスすれば無制限で閲覧できるストリーミング方式もあります。いずれの場合でも、ユーザーは購入した動画コンテンツをいつでも無期限で視聴できることが、売り切り型の特徴です。
1. 売り切り型(EST)に向いている講座
- 1講座ごとに受講料を定めている
- 受講回数が比較的に少ない講座
- ユーザーに繰り返し見てほしい講座
売り切り型は動画を1本ごとに販売できるため、「1講座いくら」とバラ売りで提供している教育事業者には適した方法です。
動画をユーザーのPCなどに保存させるダウンロード形式の場合、受講回数の多い講座ではPCが重くなるといったクレームにつながるおそれがあります。数回で終わる短期間の講座のほうが向いているでしょう。
また、ユーザーは見たいときに何度でも閲覧できますから、繰り返し見ながら習熟度を高める内容にも向いています。
2. 売り切り型(EST)の注意点
端末にダウンロードされた動画コンテンツは、オフラインでも視聴できるといったユーザー側のメリットがある一方で、その動画を不正にコピーされるリスクもあります。これを防ぐため、売り切り型で販売する際にはコピーガードとしてDRM(デジタル著作権管理)を導入するケースが多く、運営者側はその費用や運営コストが膨らむ場合があります。
ダウンロードさせるのではなく、ブラウザやアプリで再生させる形式もありますので、サービス提供事業者がどのような販売方法や対策をしているか注視しながら選ぶことも大切です。
動画販売のレンタル型(TVOD)
動画販売のレンタル型とは、レンタル代として料金を支払うことにより一定期間に限って視聴できる、動画のレンタルショップのようなものです。英語では「Transactional Video On Demand(レンタル型動画配信サービス:TVOD)」といわれます。
売り切り型と同じく、ユーザーは見たい動画に対して事前に料金を支払う方式ですが、売り切り型との違いは視聴できる期間が設定されていること。「1週間でいくら」と、レンタルショップでDVDを借りるイメージです。
また、レンタル型の動画ではストリーミング方式が一般的で、ユーザーの端末にダウンロードすることはできません。そのため、動画を不正にコピーされないという利点もあります。
1. レンタル型(TVOD)に向いている講座
- 視聴期限を設けたい
- 受講回数の多い講座
- 動画をコピーされたくない
たとえば、ライブ配信の講座で見逃し配信をしたい方や、一定期間内に見られないユーザーに対して別途安価な料金を徴収して提供したい場合などに、レンタル型の動画販売を活用できるでしょう。
また、基本的にはストリーミング方式で配信されますから、ユーザーはPCなどに保存させる必要がなく受講回数の多い講座にも適していますし、動画の不正コピーをされるリスクも抑えられます。
2. レンタル型(TVOD)の注意点
レンタル型は売り切り型と比べて、1本あたりの動画の単価が安い傾向にあります。続けて購入してもらえれば売り切り型よりも利益が出るかもしれませんが、1回見ただけで続かないユーザーが多いと、収益が得られないかもしれません。つまり、「1本の動画に十分な魅力を持つキラーコンテンツがないと続けて見てもらえない」というリスクがあるため、売り切り型よりも制作に力を入れる必要があります。
実際に、レンタル型を提供している映像配信会社では、売り切り型や、この後紹介するサブスクリプション型(SVOD)もあわせて提供している事業者が多く、レンタル型だけで安定した収益を得るのは難しいという現実を示しています。
動画販売のサブスクリプション型(SVOD)
動画販売のサブスクリプション型は、動画配信市場で現在もっとも伸びているタイプです。サブスクリプション型は、SVOD(Subscription Video On Demand:完全定額型動画配信サービス)ともいわれ、ユーザーが月額料金を払えば何本でも動画を閲覧できるスタイルです。
ユーザーからみれば、どの動画を見ても料金は一定ですから安心してコンテンツを楽しめます。逆に配信者の立場でいうと、見放題を楽しみたいユーザー(会員)を獲得すれば、安定した収益が得られ、この点でレンタル型とは大きく違うといえるでしょう。
1. サブスクリプション型(SVOD)に向いている講座
- 月額または年額で受講料を徴収する教育事業者
- 受講回数の多い講座
サブスクリプション型は、月額や年額など一定期間の受講料を払えば、どの講座でも受けられるというスタイルの教育事業者に適しています。
また、短期集中講座など配信する動画の数が多い場合でも、1時間ずつ見たり一気に見たりと好きなタイミングで学習でき、あらゆるユーザーニーズに対応できるというのもサブスクリプション型の特徴でしょう。
2. サブスクリプション型(SVOD)の注意点
サブスクリプション型の魅力は「見放題」であることですが、いくら見放題でも見たい動画がなかったり、そもそも動画コンテンツの数が少なかったりすると会員を獲得できず、収益が見込めないという一面もあります。
レンタル型と同じく、「十分な魅力を持つキラーコンテンツがないと継続的に見てもらえない」というリスクがあることも覚えておきましょう。
動画コンテンツの数が少ない場合は、無料で閲覧できるコンテンツで会員を獲得する、契約期間や料金プランを選べるようにするなどの工夫をして会員獲得につなげていくことが重要です。
まとめ
動画販売で収益を得る方法を3つご紹介しましたが、いずれの方法にもメリットとデメリットがあります。
大切なことは、自社が販売したい動画のニーズをしっかりおさえること。どの販売方法なら多くのユーザーを獲得できるのか、綿密な市場リサーチを行い、比較したうえで決定することが動画販売で安定した収益を得るためのポイントとなります。
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