今春から本格的に始動したGIGAスクール構想。2019年に文部科学省によって提唱され、当初は5ヵ年計画であったものが新型コロナウイルス禍により、大幅に前倒しされました。
では、実際にその進捗状況はどのようになっているのでしょうか?
本コラムでは、GIGAスクール構想の現状と、実現に当たり立ちはだかる課題についてご紹介いたします。
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GIGAスクール構想の現状
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、大幅に前倒しされたGIGAスクール構想。すでに実際に児童生徒1人1台の端末配備を済ませた自治体も多く、実現に向けて大きく動き出しています。
全国の小中学校の子どもたちを対象としたGIGAスクール構想ですが、実際にどの程度まで進んでいるのでしょうか?
文部科学省が今年3月に発表した「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の進捗状況について」によれば、全自治体等のうち1,769自治体等(97.6%)が令和2年度内、つまり2021年3月末までに児童生徒1人1台の端末納品を完了する見込みだといいます。
校内通信ネットワーク環境の整備については、全体のうち86.2%の学校が令和2年度内に、97.9%の学校はほぼ新学期から供用開始の見込みだといいます。
GIGAスクール構想は、端末やネットワーク整備の実現を目指したものではなく、その先の教育こそが本丸ですが、まずは土台がほぼ仕上がり、スタートラインに立ったところだといえそうです。
GIGAスクール構想が抱える課題
ただ、今後のGIGAスクール構想を推進するに当たり、課題もあります。
教員のICT教育スキル不足
教員のうち若い世代はデジタルネイティブに当たりますが、自分自身でICTを使いこなせることと、子どもたちにICTを活用した効果的な授業を提供できるスキルとはまた別ものです。
多くの教員は、学生時代に授業へのICT活用に関する教育を受けていないため、子どもたちへ1人1台の端末が配備されたとはいえ、すぐにそれを十分に活用して先進的な授業を展開できるわけではありません。
文部科学省ではこの対策として、「教育の情報化に関する手引」をまとめ、情報教育やICTを活用した指導、ICT環境整備等を行う際に参考となるようなノウハウとして公開したり、民間人を活用したICT支援員の派遣など人的サポートを行うとしています。
情報セキュリティ対策
GIGAスクール構想には、高速な校内LANの整備やクラウド利用も含まれています。児童生徒が1人1台の端末を利用し、事務管理などにおいてもICTが活用される中で、子どもたちの個人情報などが流出することのないよう、十分なセキュリティ対策を講じなければなりません。
情報セキュリティ対策について文部科学省では、各教育委員会・学校単位で情報セキュリティポリシーの作成や見直しを行うよう促しており、その際の参考となるよう、平成29(2017)年に策定した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインを、クラウド・バイ・デフォルトの原則を踏まえて改訂するとしています。
GIGAスクール構想の実現を進めるべき理由
こうした課題を乗り越えてでもGIGAスクール構想を実現させるべき理由は何でしょうか?
次の大きく2つの理由があります。
子どもたちに変化の激しい新時代を生き抜く力を身に付けてもらうため
現在の小中高校生が大人になって社会に出る頃には、日本や世界が今はまだ誰も想像がつかないような変化を遂げている可能性が小さくありません。今以上にAIやロボティクス、ビッグデータ活用などが進むであろう未来において、プログラミングを初めとするITの基礎を身に付ける必要があるでしょう。
また、既存の知識習得型の教育では難しい、情報を活用して課題を見つけたり解決したりできるようなスキルを身につけるには、アクティブラーニングやSTEAM教育といった教育手法を導入する必要があり、ICTの活用有効であると考えられます。
こうした先進的な教育を受ける機会を、地位格差や収入格差などによって得られない子どもが出ないようにするため、全国一斉に実施するGIGAスクール構想の推進が求められているのです。
双方向性で子どもたち一人ひとりに合った授業を提供するため
既存の集団授業スタイルでは、個々の理解度に関わらず全員同じ速度で授業が進められました。ICT活用で、子どもたち一人ひとりの学習進捗状況を可視化できるようになるため、それぞれのぺースに合わせた学習を実現できます。
また、意見を発表する場では、積極性の高い一部の子どもだけが手を挙げて意見を述べる一方、本当は良いアイデアを持っているのに発言しないばかりに周囲に伝わらないというケースも多く見られました。これは、発言しない子どもが評価されないだけでなく、同じ教室にいるほかの子どもたちにとってもさまざまな考えを交換することができないというデメリットにつながります。
ICTを活用すれば、全員の画面をスクリーンに映し出すといった方法で共有できるようになります。
このように、それぞれのぺースで学習を進められる点や他者との意見交換により、創造力が育むことも期待できます。
まとめ
日本は、世界的に見ても学校現場におけるICT活用がまだ進んでいるとはいえず、GIGAスクール構想においても課題を抱えています。
当初は5ヵ年計画であったGIGAスクール構想は、新型コロナウイルス禍によって大幅に前倒して進行していますが、上記で挙げた課題のほか、実現した場合に生まれると考えられるデメリットもあります。
しかし、GIGAスクール構想の実現により、子どもたち一人一人に合った新しい教育を実現できる可能性があり、期待される効果も大きいものがあります。動向を見守りつつ、必要な対策を講じて、うまく活用していきましょう。
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