DX(デジタルトランスフォーメーション)化など変化の激しい現代社会において、経済産業省が提唱した「リスキリング」。今、日本企業のみならず海外企業でもさかんに取り入れられている人材育成手法です。
今回は、リスキリングとは具体的にどのような手法なのか、注目されるようになった背景や取り入れるメリットなどを交えながらご紹介します。
リスキリングとは
リスキリングとは、「職業能力の再開発・再教育」という意味を持つ言葉です。近年では、「市場ニーズの変化に適応するための新たな業務に順応できるスキルを意図的に得て、専門性を高めるための取り組み」という意味合いで使われることが多く、DXの推進をはじめとする働き方の変化に対応するための人材育成法として、近年注目を集めています。
デジタル化が進む中で注目されるリスキリング
DXの推進によって仕事のデジタル化・自動化が進むと、これまで人間が行っていた製造・事務・肉体労働といった作業はロボットに任せることになり、その代わりにロボットのプログラム設計やシステムの管理、その管理に携わる社員の統括など、新たな業務が発生します。
これらの業務には新たなスキルが必要ですが、そのスキルを持った人材を新しく雇用するとなると多大なコストがかかり、また既存の社員のリストラなどにもつながりかねません。そこで、既存の社員に新しく発生する業務に対応できるようスキルを身につけてもらうための取り組みがリスキリングです。
今後より一層の浸透が期待される
今では日立・富士通・大阪ガスなどの大手企業がリスキリングを取り入れており、海外でもAmazonやウォルマートといった名だたる企業がリスキリングに力を入れることを宣言しています。また、専門の育成プログラムを作成し提供する企業も増えています。
一方で、2019年のIBMの調査によると、日本では500万人近い労働者にリスキリングを行う必要があるとされており、今後リスキリングがより浸透していくことが期待されています。
リスキリングが注目される背景
今リスキリングが注目されている背景には、まず前述のようにDXの推進があります。特に新型コロナウイルスの流行以後は、多くの企業がオンライン会議やリモートワークの導入、ペーパーレスの推進など、デジタル施策を取り入れるようになりました。
きっかけは新型コロナウイルスの感染予防対策であっても、今後はコロナ禍が終息した後もDXによる生産性の向上・付加価値の高いサービスや商品の創出・新たなビジネスモデルの開発などが求められると予想されます。その流れに対応するためには、リスキリングが欠かせないといえるでしょう。
また、特に日本企業においては、一度、雇用した社員を新たな業務に対応できないからといって解雇することは法律上困難です。また、もし仮に新規採用を行おうと思っても、DXに対応したスキルを持つ人材は不足しているのが現状です。
そのため、数少ない人材の中から新規に採用するよりも、既存社員にリスキリングを行ってDXに伴う新たな業務に対応できる人材へと育てるほうが効率的だといえます。このことも、リスキリングが注目されている背景の一つです。
リスキリングのメリット
リスキリングを行うことで、企業や社員にはさまざまなメリットがもたらされます。ここからは4つのメリットを取り上げてご紹介します。リスキリングを取り入れるべきか否か迷っている方は、ぜひチェックしてください。
メリット1:生産性の向上
リスキリングを行うことでスムーズにDXを推進できれば、今まで人間の手で行っていた業務がテクノロジーを活用して正確に、かつ素早く行えるようになります。その結果、社員が行うべきタスクを減らすことができ、より取り組むべき業務に集中できるようになるため生産性が向上します。
リスキリングを行うことでスムーズにDXを推進できれば、今まで人間の手で行っていた業務がテクノロジーを活用して正確に、かつ素早く行えるようになります。その結果、社員が行うべきタスクを減らすことができ、より取り組むべき業務に集中できるようになるため生産性が向上します。
メリット2:人材採用・育成コストの削減
DX推進のために新たな人材を雇用するとなると、採用・育成に多大な手間とコストがかかります。その点、リスキリングをうまく活用して既存社員を新しい業務に対応できるよう育成すれば、新規に採用・育成を行う場合に比べて費用も手間も抑えられます。
新規採用を行う場合、本当に求めるスキルを持っているか、社内風土にそぐう人材かなどの見極めが難しいという課題もあるため、すでに社内になじんでいる社員に求めるスキルを的確に身につけてもらえるリスキリングは効率が良いだけでなく、予測どおりの効果が出やすいことも期待できます。
メリット3:離職率の低下・企業文化の継承
新たな人材を多人数取り入れた場合、企業がこれまで築き上げてきた企業文化を継承したり、社風や理念を守ることが課題となる可能性も考えられます。また、新規採用に伴い既存社員を解雇すれば、社員に不満を抱かせ離職率を上げてしまうことにもつながりかねません。
既存社員の解雇や新規採用によってDXを急速に推進できたとしても、企業理念や顧客のニーズに沿った形でなければ逆効果になりうることもあります。社内文化や理念を守りながらDXを推進するには、リスキリングによって既存社員を活かす方法がより有効だといえます。
さらに、個々の社員がスキルアップして専門性を高めれば、自身の活躍の場が広がることで満足度も向上し、離職率の低下にもつなげることができます。
メリット4:新しいアイデアの創出
リスキリングを行えば社員は当然新しいスキルを習得でき、そうして視野が広がることで、今までになかった新しいアイデアの創出にもつながります。
社内に新しいアイデアが多く生まれれば、時代の変遷に対応できず経営が悪化することや、マンネリによる事業の陳腐化を防ぐことができます。企業に新たな風を送り込めることも、リスキリングを行うメリットの一つです。
これらは、ひいては業績の向上や事業の拡大にもつながっていくでしょう。
リスキリングを実践するうえでのポイント
リスキリングを実施する上でのポイント・注意点
└リスキリングを実践するうえでのポイント
リスキリングは継続して行うことで効果が得られます。スキルを業務に役立てるためには、学習し続け常にアップデートしていくことが必要です。リスキリングを導入する際や、継続して実施するうえでのポイントを紹介します。
リスキリングに対する社内の理解と協力体制を整える
社内の理解と協力体制を整えるために、自ら取り組み賛同者を増やすことが大切です。リスキリングを行っている事例を学び、経営陣や従業員にリスキリングの最新情報や良さを伝えることも賛同者を増やすために効果があります。リスキリングへの理解と協力体制を整えることで、従業員の成長や変化への意欲が高まり、企業や組織全体で新しく学ぶ体制が作られれば、リスキリングの導入がしやすくなります。
従業員のモチベーションが維持される仕組みを作る
リスキリングに取り組む中で、抵抗を感じる従業員や途中でモチベーションが下がってしまう従業員もいます。インセンティブを用意するなどの評価制度を用意し、モチベーションが維持される仕組みを作ることが大切です。スキルを習得し新しい業務に取り組むことで、リスキリングによって成長し活躍できるようになるという体感をさせることや、従業員同士が一つの目標に向かって高め合うことで、モチベーションを維持しリスキリングを継続していくことができます。
社内のリスキリングに適したコンテンツを選ぶ
社内の課題解決のために適したリスキリングのコンテンツを用意することが重要です。現在身に着けているスキルと、求めるスキルのギャップを明確にしましょう。質のいいコンテンツを利用することが社内の課題解決につながるとは限りません。どのように適したコンテンツを選ぶかということも重要で、社外のリスキリングに詳しい専門家に相談したり、外部サービスを活用することも効果的な方法です。社内の課題に合わせてコンテンツを制作できる場合もあります。社内の状況に合わせて適したコンテンツを選びましょう。
まとめ
今回は、DXの推進が活発化する社会の中で注目を集める人材育成法・リスキリングについてご紹介しました。リスキリングは、デジタルに関わりの深いIT企業やその関連企業はもちろん、その他すべての業種・業界においてメリットが生まれる取り組みです。
働き方改革などを含め働き方が変遷していくこれからの社会において、ますます注目されていくと考えられるリスキリング。時代の変化に対応するためにも、ぜひ取り入れることを検討してみてください。
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