タブレット端末や電子黒板などを活用した「ICT教育」を導入する学校が、年々増加傾向にあります。
ICTの導入により、企業では業務効率化や売上向上などさまざまな恩恵を受けられますが、教育現場でも授業の効率化や生徒のモチベーション向上といった効果が期待されるようです。
その一方で、急速に進むICT化に教育現場では戸惑いの声も聞かれます。本コラムでは、ICT教育がもたらす効果と現場が抱える課題について考えてみましょう。
ICT教育とは
ICT教育とは、簡単にいうと「教育のデジタル化」のことです。教室にパソコンや電子黒板、電子教科書、Wi-Fi環境などを整備し、インターネットをはじめ情報通信技術(ICT)を活用して授業を進めます。
具体的には、教員は黒板に板書するのではなくパソコンを操作して電子黒板に映し出したり、生徒はタブレット端末の電子教科書で学んだり、生徒が作成した資料を電子黒板やクラス全員のタブレット端末に転送して共有したりといった活用が、ICT教育で実現します。
ICT教育は、文部科学省が推し進める政策のひとつです。次世代を担う子どもたちには、言語力や数学的思考力といった従来の教育に加え、情報の選択や活用ができる資質と能力も求められるようになります。子どもたちが社会に出たときに必要なスキルを養うためにも、ICT教育は必要不可欠な取り組みとして文部科学省が推進しているのです。
ICT教育で期待される効果
ICT教育を導入することで、子どもたちが主体的に学ぼうとする意欲が高まるとともに、教員にとっても授業の効率化や均一化が進み、全体的な教育の質の向上が期待されます。
ここで、ICT教育で期待される具体的な効果について、みていきましょう。
授業の効率化で教員の負担が軽減する
従来の授業では、教員が黒板に板書しながら授業を進めていました。とくに教科ごとに担当教員がわかれる中学校以上になると、同じ内容を何度も板書したり、クラスによっては板書する内容が違ったりすることもあるのではないでしょうか。
ICT教育であれば、教員はパソコンで作成した資料を電子黒板に映し出すことで授業を進められますから、板書の手間を省け抜けや漏れが生じることもなく、効率的かつ均一な授業ができるようになります。
また、授業後に生徒からの質問内容を踏まえて資料をブラッシュアップしたり、その内容を他の教員に共有したりすることで、教育の質をより高めることも可能でしょう。
導入する学習システムのなかには、生徒のタブレット端末と連携して、得意・不得意分野を分析できる機能を備えたものもあります。こうしたシステムを導入することで、一人ひとりの生徒に合わせた効果的な学習プランの提案ができるのも、ICTを活用するメリットです。
生徒が主体的に学ぶようになる
電子黒板や電子教科書のメリットのひとつに、動画や音声を交えてわかりやすく説明できる点が挙げられます。たとえば社会の授業の場合、実際の仕事風景を動画で見せたり、地形ができる様子をアニメやCGで説明したりと、生徒の印象に残るようなコンテンツを使用することで、習熟度を高めることが可能です。
授業だけでなく、教室にいながら他の地域や海外の学生と交流したり、専門家や戦争体験者などから貴重な話しを聞けたりといった校外活動にも、ICT教育なら容易に実現できます。
従来の紙媒体で文字がメインの授業から、動画や音声がメインになることで、生徒が学習に興味を持ち主体的に学ぶようになることも、ICT教育には期待されているのです。
子どものリテラシーの向上
子どもたちが成長すれば、いずれタブレット端末やスマートフォンなどを使うときがやってきます。ICT教育を実践していれば、端末の使い方に慣れるのはもちろん、情報の収集や処理方法、アプリの操作方法といった知識もおのずと身につくでしょう。
ここで重要なのは、「インターネットの正しい使い方を学ばせる」ことです。最近は、SNSなどを使った犯罪に未成年者が巻き込まれる事件を、よく耳にします。こうしたトラブルに巻き込まれないためにも、小学生のころからスマートフォンやアプリの正しい利用法を理解させ、ICTのリテラシーを高めることが大切でしょう。
日本のICT教育が抱える課題
ICT教育を実践することにより、さまざまな効果が期待される一方で、教育現場では克服しなければならない課題も多く残されています。
インフラの整備が不十分
ICT教育を実践するには、パソコン、電子黒板、電子教科書、そしてインターネット環境が必要です。このうちインターネット環境については、地域によって格差が見られます。たとえば、教室内の無線LANの整備率をみると、徳島県は98.5%とほぼすべての学校で整備されているのに対し、広島県は47.1%と半分にも満たない状況です(全国平均は78.2%)。
また、公立と私立とでもICT教育への意識に差があるようです。私立だと教職員や保護者の意見がまとまれば推進しやすいのに対し、公立の場合は自治体や教育委員会の意見も踏まえなければならず、導入が進みにくい地域や学校もあるでしょう。
ICT教育を推進するには、自治体や国のサポートが必要不可欠といえます。
参考:文部科学省「令和2年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査」
ICT教育のノウハウが体系化されていない
自治体だけでなく、個々の教員にICT教育に対する意識の差があることも、課題のひとつです。当然のことながら、端末やアプリを使うのが苦手な教員もいます。いくらタブレット端末や電子黒板などの導入が進んでも、使いこなせない教員が多ければ無駄な投資になってしまうのです。
リテラシーを高めるために、研修をおこなう教育委員会や学校もありますが、具体的な活用法や取り組みまで指導されず、結局現場の裁量に任されるケースも少なくありません。
ICT教育のノウハウをより具体的に体系化し、すべての教員が使いこなせるようになる体制づくりも必要になってきます。指導やフォローをするために、ICT教育の専門家を配置することも一手でしょう。
教員の業務量が増える可能性もある
ICT教育により教育現場の効率化が期待される一方で、教員の業務量が増えるのではと心配する声も聞かれます。授業は効率的になっても、授業で使う資料を作成する業務が生じるからです。
パソコンなどに使い慣れた教員であれば資料を短時間で作成できても、使い慣れない教員からすれば資料を作成する以前に、ICT機器の使い方などを学ぶ時間も必要になります。ただでさえ多忙なのに、ICT教育に割く時間がないという教員も少なくありません。ましてや、機器を使うことで授業の効率を悪くなっては本末転倒です。
この課題についても、教員をフォローする専門家を配置するなど、学校ごとに体制を整えることが求められます。
まとめ
ICT教育は、教員にも生徒にもメリットがある一方で、整備の地域格差や教員のリテラシーを高めるサポート体制など、まだまだ課題が多くあります。とはいえ、教育現場でICTを活用する場面が今後も増え続けることが必至ですし、先延ばしにすることは子どもたちの将来にとっても良いことではありません。
一つひとつの課題を克服しながら、子どもたちが授業を楽しめるICT教育を考えていきたいものです。
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