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ICT教育が注目されている理由 日本の現状と海外の事例

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ICT教育が注目されている理由 日本の現状と海外の事例

新型コロナウィルス感染拡大による影響は、教育現場でも「対面授業ができない」という問題を突きつけました。こうしたなか、教育現場で改めて注目を集めたのがICT教育です。
国は、コロナ禍以前より教員や生徒に大きなメリットがあるとしてICT教育を推進しています。しかし、海外と比べて日本は後れを取っているのが現状です。
本コラムでは、日本と海外のICT教育を比べながら、海外ではどのようなICT教育を実施しているのかも紹介します。

ICT教育が注目されている理由

ICT教育の目的のひとつが、「教育の質の向上」です。それは、教員にとっても生徒にとっても大きなメリットといえます。
教員にとってのメリットは、業務の効率化が期待できることです。従来のように、プリントの印刷や教材の準備などが簡素化され、授業中も板書する必要がなく電子黒板で進めることから、教員の負担を軽減できるといわれます。また、情報やコンテンツを教員同士で共有することにより、均一な教育を提供できるようになるのも、教育の質の向上につながるでしょう。
生徒にとっても、動画や音声などを活用した教材コンテンツの活用により、学習に興味を持ち主体的に学ぼうとする姿勢が生まれやすくなります。活用法によっては、従来の黒板を写すだけという受動的なスタイルから、タブレット端末で授業内容を共有するといった能動的なスタイルに変化させることも可能です。たとえば、自分が作成した資料を電子黒板や他の生徒のタブレットに共有するといった方法も容易にできます。双方向型のアクティブ・ラーニングのような授業も、ICT教育なら実現しやすくなるでしょう。
さらに、どこにいても均等な教育を受けられるという点も、ICT教育が注目されている理由のひとつです。2020年春にあった全国一斉休校のようなことが起きても、インターネット環境とタブレット端末があれば家にいながら授業が受けられますし、過疎地や遠隔地といった問題を抱える地域でも「遠隔授業」により均等な教育を提供できるようになります。

日本のICT教育の現状

ICT教育は、国にとって重要な政策のひとつです。これを具現化した教育改革として、文部科学省では「GIGAスクール構想」を推進しています。GIGAスクール構想とは、生徒1人1台のタブレット端末を与えるとともに、学校には高速・大容量の通信ネットワークを整備して、次世代学校教育への技術革新を行おうというものです。すでに生徒1人1台の端末配備を済ませた自治体もあり、実現に向けて大きく動き出しています。
とはいえ、日本のICT教育は海外と比べて遅れているのが現状です。文部科学省がまとめた調査によると、教育用コンピュータ1台当たりの生徒数は4.9人(2020年)。アメリカは2008年のデータで、コンピュータ1台当たり3.1人ですから、日本が10年以上も遅れていることがわかります(なお、2021年のデータでは、日本はコンピュータ1台当たり1.9人にまで普及しています)。
タブレット端末が普及しても、教室で利用できる環境がなければ意味がありません。日本における教室の無線LAN整備率は48.9%、電子黒板などの大型提示装置整備率は60.0%(ともに2020年)と、半分前後の学校では導入されていないことがわかります。
また、実際に学校の授業で利用されているかを調査した報告によると、日本では国語、数学、理科において「デジタル機器を利用しない」と答えた生徒の割合が約8割もいました。OECD(経済協力開発機構)の加盟国では、利用している生徒のほうが半分以上もいたのに対して、日本では2割前後の生徒しか活用していないのが実情です。

日本のICT教育が遅れている理由

上記の数値はGIGAスクール構想などにより徐々に改善されていますが、それにしてもなぜ、日本はここまでICT教育に遅れを取っているのでしょうか。
理由のひとつが、「予算を確保できない」ことが挙げられます。上述の通り、タブレット端末を生徒1人1台導入するにしても、教室の無線LAN環境を整備したり、セキュリティ対策を施したりと、多くの財源が必要になります。
また、「教育現場にICTを使いこなせる人材が不足している」ことも課題です。生徒にICT機器を使わせるには、まず教員が使いこなせるよう学習する必要があります。ただでさえ業務量が多いといわれるなか、ICTを学ぶ時間も必要となれば、教員の負担はますます大きくなるでしょう。
こうした課題を解決していくことが、ICT教育の推進するうえで求められるのです。

参考:
文部科学省「令和2年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査」
文部科学省・国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査」

海外のICT教育の事例

海外では、どのようなICT教育を進めているのでしょうか。ICT教育における先進国の実情をみていきましょう。

アメリカ合衆国

アメリカは州によっても異なりますが、ほとんどの州で生徒にノートパソコンやタブレット端末を配布し、授業を行っているようです。個人のスマートフォンも必要に応じて利用を許可するといった体制も整っています。

シンガポール

シンガポールも、ICT教育の先進国のひとつ。日本からも多くの専門家が視察に訪れています。注目すべきは「フューチャースクール」という制度。これは、ICTを活用した教育法を学校が政府に提案できるというもの。採用されると、生徒1人1台のタブレット端末が学校に配布されるなど、国からの手厚い支援が受けられます。

韓国

2006年には電子黒板や無線LANなどを整備して利用環境を構築したり、2007年にはタブレット端末を活用したデジタル教科書を採用したりと、早くからICT教育の環境整備を進めてきた韓国。国が率先して教育ポータルサイトを立ち上げ、教材や学習ツールを共有できるしくみも整っています。

オランダ

オランダも、国が率先してICT教育を推進するため、デジタル教材のプラットフォームを提供するなど、さまざまな支援を行っています。学習進捗状況を管理できるアプリも提供しており、生徒だけでなく保護者とも共有できるしくみになっています。

フィンランド

フィンランドでは、1990年代からICT教育環境の整備が進められてきました。現在のインターネットの整備率は100%。すべての小学校に電子黒板が導入されています。最近では、VRグラスを授業に導入するなど新たな施策にも積極的に取り入れ、ICTの活用が飛躍的に進んでいる国です。

イギリス

イギリスでは、2014年に「Computing」という新教科が導入されました。主にプログラミングの学習で、2020年から始まった日本のプログラミング教育を先取りしたかたちです。また、学校によっては教室内に電子黒板や複数のデスクトップパソコンを設置するなど、生徒が気軽にICT機器に触れられる環境も整備されています。

まとめ

コロナ禍になって、ICT教育の重要性を認識させられた方も多いのではないでしょうか。それと同時に、10年、20年以上も前からICT化が進んでいる諸外国の実情を知り、日本の教育現場がいかに遅れているかと気付かされた教育関係者も少なくないでしょう。
海外では、国が率先してICT教育を推進しているところもあれば、学校から国に提案できるしくみがあるなど、国と教育現場の足並みがそろっているケースが多くみられます。
日本では、国も教育現場も課題を抱えているようにみえますが、一つひとつ解決しながら進めていくことがICT教育の普及させる近道といえるでしょう。

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執筆者情報

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