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リスキリングの日本での取り組み状況と課題

リスキリングの日本での取り組み状況と課題

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リスキリングの日本での取り組み状況と課題

DX化が進む現代社会で注目を集める、新たなスキルを獲得するための学習・教育手法「リスキリング」。現在、日本ではどのように取り入れられているのでしょうか。

この記事では、実際の事例を日本企業はもちろん海外企業も取り上げながらご紹介します。また、日本企業における課題も解説しているので、リスキリングを導入しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

リスキリングとは

└リスキリングとは
└リスキリングとは(6p)

リスキリングとは、職業能力の再開発、再教育を意味する言葉で、新しい職業や、今の職業で新しく必要とされるスキルの変化に適応するために、新たに必要なスキルを獲得することです。リスキリングという言葉は、日本では聞きなれない人も多く、認知度は低いかもしれませんが、人事戦略として重要なものになると考えられています。企業は生き残るために新たに価値を高める挑戦をする必要があり、従業員に今後必要となるスキルを習得してもらう必要があります。

DXの推進などで新たに職業や職種が必要となるなど変化する働き方に対応するために、スキルの習得が必要となる状況が増えています。もともとスキルを持った人材を新しく雇用すると多大なコストもかかり、人手が不要になる職業の社員などがリストラになってしまう可能性があります。既存の社員が、新しく発生する業務に対応できるようスキルを身につけてもらうためにリスキリングが必要です。

リスキリングとリカレント教育の違い

リスキリングはリカレントと同じ意味で使用される場合があり、言葉の意味という点では違いはありませんが、大きく違う部分があります。リスキリングは企業が従業員に対して新しく必要となるスキルや知識を身に着けてもらうための取り組みです。リカレント教育は新しいスキルを身に着けるために一度職を離れることが前提となり、労働者自身が大学や教育機関で学ぶことになります。

リスキリングとOJTの違い

企業の社内教育として「OJT(職場内教育訓練)」がありますが、OJTは現在の社内業務の対応方法や流れを教育する取り組みです。リスキリングは新しい事業や業務のために、今後必要になるスキルや能力を身に着けることが目的です。

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リスキリングの日本での取り組み状況

近年は日本でも、大手企業を中心にリスキリングを取り入れる企業が増えています。その中から3つの事例を取り上げてご紹介します。

日立製作所

日立グループには人材育成・研修に特化した日立アカデミーという企業があり、独自の学習プログラムを開発しています。重点課題の一つが「デジタル対応力を持つ人材の強化」で、デジタル関連の学習プログラムは2019年度末時点で約100コースにも上ります。

日立製作所は、2020年度に日立アカデミーと連携して「デジタルリテラシーエクササイズ」という基礎教育プログラムを開発しました。DX推進に関わるスキルの学習過程を登山に見立てており、4つのステップで必要なデジタルスキルを的確に身につけられるように設計されています。

具体的には、ステップ1で「デジタルとは」「DXとは」という基礎を学び、ステップ2で課題発見のフォーマットを習得します。次にステップ3ではデータ分析によって課題を解決する手法を身につけ、ステップ4では実際に問題解決をデジタルに実行できる実践力を学ぶという手順です。

このプログラムは国内の日立グループの全従業員約16万人が受講でき、DX社会におけるさまざまな戦略を実現できる人材の育成に役立っています。

大阪ガス

リスキリングにおいて大阪ガスが重要視しているのが、「誰もがデータを正しく活用できるように」ということです。その前提のもと、少数のデータサイエンティストのみでなく全従業員がデータリテラシーを身につけられるよう、データ分析力を高める「データ分析講習」の提供を2011年から開始しています。

この講習は、講師による講義のほか、自主的な個人演習やグループでのケーススタディ演習も用いて、実践することを重視しながら実際にデータに触れる経験を多く取り入れているのが特徴です。

また、大阪ガスでは講習終了後の実践も大切に考えており、業務においてすぐには活用の場がない場合には気になるテーマでの思考実験やプライベートでの意思決定を通して実践し、スキルを定着させるよう推進しています。

富士通

富士通は、2020年度の経営方針において成長投資を加速させることを発表しました。その中にはDX企業への変革という内容が含まれており、社会や顧客へ提供する価値の創造を含め、5年間で5,000~6,000億円の投資を予定しています。

この成長を実現するために取り組むことを打ち出した課題の一端がリスキリングです。約13万人の社員がDX人材へと成長することを目指し、デザイン思考やアジャイルマインド(価値創造思考)の教育を進めています。

リスキリングの海外での事例

日本に比べ、海外ではよりリスキリングに積極的な企業が多く見られます。どのように取り入れられているのか、3つの事例をご紹介します。

AT&T

AT&Tは、通信事業者であり、またワーナーメディアを傘下に持つ複合企業でもあります。2008年と早い段階から「未来の事業に必要なスキルを持つ人材は従業員の半数に過ぎない」と考えていたとされています。

その後、2013年には今も後継プログラムが続いているリスキリングのプログラムをスタートし、2020年までに10億ドルを費やして10万人にリスキリングを行いました。その結果、リスキリングを行った従業員はそうでない従業員に比べ評価が高く、表彰や昇進も多く実現しており、さらに離職率も低いことを証明しています。

具体的に行った施策としては、人材移動を円滑にするための環境整備や、キャリア開発支援ツール・ワンストップ学習プラットフォームの提供、オンライン訓練コースの開発などが挙げられます。

ウォルマート

大手スーパーマーケットチェーンのウォルマートでは、小売りのDXに従業員が対応できるようリスキリングを実施しています。

VRを用いたリスキリングが特徴で、店舗にいながらブラックフライデーなどのイベントや災害時の対応などを疑似体験して経験を積めるプログラムを従業員に提供しています。また、eコマースに対応した機械の操作をバーチャルで学ぶことなどもできます。

Amazon

Amazonは、2025年までに米Amazonの従業員10万人を対象に1人あたり約75万円を投資してリスキリングを行うと発表しました。

IT系のエンジニアがAIなどのより高度なスキルを得るための「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」、現状では非技術系の従業員に技術職へと移行できるスキルを獲得させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー」など、それぞれの従業員の現状や目指すスキルに合わせたプログラムが展開されています。

リスキリングの日本での課題

徐々に注目が集まり一般的となりつつあるリスキリングですが、まだまだ課題は多く残っています。特に日本では、特有の風土などによる課題も挙げられます。導入にあたって、どのような課題があるのか把握して対策しておきましょう。

リスキリング自体の認知度の低さ

リスキリングは、世界経済会議がリスキリングに関するセッションや宣言を行っていることにより世界中で注目が集まっていますが、海外と比べて日本での認知度はまだまだ低いと言えます。

しかし、日本でも大手企業などがDXの基礎教育を施すなどリスキリングを取り入れることが増えています。今このタイミングこそ、リスキリングを取り入れる絶好のチャンスだとも考えられます。大手企業や海外の事例を参考に、従業員が当事者としてリスキリングをとらえられるよう情報を発信していきましょう。

リスキリングへの抵抗感

どの企業でも、リスキリングに抵抗感を示す人は出てきかねません。リスキリングをスムーズに進めるためには、リスキリングによって新たな価値を創造できる人材になれることや、その結果企業がDX時代を生き残れることなどのメリットをしっかりと伝えていきましょう。

たとえば、海外企業では、リスキリングのメリットを感じさせるために参加した従業員をより高く評価したり昇進させたりといった工夫を行っている企業が多く見られます。目に見えるためわかりやすいものの、日本の人事制度においてはこういった工夫は取り入れづらいかもしれません。

そのため、新たな業務の可能性やこれからの時代に適応できる人材への成長などについて伝え、モチベーションを維持していくことが重要です。

スキル可視化における難点

リスキリングを行うにはまず必要なスキルと社員が現在保持しているスキルの可視化を行います。しかし日本企業では、その際に多く用いられるスキルデータベース・スキルマップなどの信頼度が低い傾向にあります。

AIを活用するなどさまざまなデータ分析方法を試し、スキルの可視化を明確に行えるよう検討する必要があるでしょう。

まとめ

ここまで、リスキリングの日本と海外における取り組み事例と日本での課題をご紹介しました。DXをスムーズに推進するためにも、実際の事例を参考に課題をクリアする方法を考慮し、リスキリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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執筆者情報

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